サイレントサマー

「もうこんな時間かいな」

 

パイプ状のウォータースライダーの奥から、たしかにそう聞こえてきた。俺の前の、齢70ほどのジジイが滑り始めたばかりだった。

 

あのジジイがパイプの中で、時間を気にしたらしい。キモかった。館内の掛け時計を見た。11:20。どんな時間なんだろう。

 

「…にゅ…あ…」

 

小さく、にゅあ、と聞こえた。なんて言ったんだ。柔和?Sure?分からない。俺は転んだ。

何秒かあと、ジジイがプールに着水する音がした。ゴボッ…と排水口が詰まったような音だった。

 

『次の方…どぞwww』

 

係員が俺に声をかけた。何がおかしいんだ。

俺は立ちながら泣いてしまった。後ろのババアに、「早くしなさいよ!!」と怒鳴られた。

前へ進んだ。ボソッと「Victim(ヴィクティム)」とも言われた。

 

「でゎ、行きまつるᕦ(ò_óˇ)ᕤ」

 

気付いたら、俺の目の前にあのジジイがいた。元気モリモリみたいなポーズをしていた。ジジイは何故か、全く濡れていなかった。

 

「博士(はかせ)」

 

ジジイがそう言った。博士?後ろのババアから、ズゾゾゾゾ!!と麺をすする音が聞こえた。俺は再び館内の掛け時計を見た。11:20。11:20?

 

「勝って当たり前…」

 

ジジイが何かに闘志を燃やしていた。が、俺はそれどころではなかった。何度確認しても時計が進んでいない。故障か?

 

ジジイがくるっと振り向いてこちらを見た。

 

「チェスやと思ったやろ?」

 

白目を剥きながら、ジジイはニカッと笑った。チェスやとは一切思っていなかった。だが、俺はすっかりジジイに気圧されてしまっていた。

 

「は、はぁ」

「んん…ちゅぱぁ…」

 

ジジイは俺の同意を無視して、自分の親指を夢中でしゃぶっていた。麺を食べきったババアは直立不動で「何よ…これ…」と放心していた。係員はただ俺たちを見ていた。11:20。

 

「ほなな、にいちゃん」

 

ベトベトの親指で、グッ、とサムズアップしてきた。よく見ると、可愛い顔をしていた。ジジイは俺を向いたまま後ずさり、尻からゆっくりとパイプに入っていった。

 

「また、初瀬(はつせ)で逢(あ)おうや」

 

最後にもう一度白目を剥いて、ジジイはパイプの奥へと吸い込まれていった。俺・ババア・係員はウオオオオオオ!!と、金色のガッシュ!!と同じ感じで号泣した。数十秒後、ドボン、と着水する音が聞こえた。ジジイがこの世から姿を消した確かな証だった。11:21。

 

「こんな事してちゃいけない」

「私たちも帰らないと」

『同感です、行きましょう』

 

俺含めた3人は顔を見合わすと頷き、階段に向かい走り始めた。

 

 

 

 

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ひゃあ〜〜!!いっそげいっそげ〜〜!!

 

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

 

ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3=3=3=3=3=3=3

ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3=3=3=3=3=3=3

ヽ( ̄д ̄;)ノ=3=3=3=3=3=3=3=3=3

あああああ〜〜〜〜〜!!いそげ〜〜〜〜!!

 

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

ひゃあ〜〜〜〜っ!!!

 

 

 

 

もうっ!!!

 

ほんっと忙しい!💢💢💢(怒)