セクシーデート
「おでんの具ってさぁ」
そう言いかける男の頭を、私は拳銃で撃ち抜いた。映画のような派手な演出はなく、大変シンプルな即死で好感が持てた。撃つとほぼ同時に後ろへ少し吹っ飛んだので、それは死ではなく、衝撃によってなのだろう、と気付けた。普段の私は撃つとすぐにスマホを眺めてしまうため、見逃していた。スマートフォン 見すぎていたら あかんぜよ。頭の中の誰かが私に川柳を詠んできた。殺した。
「ふーっ……ふーっ……ふーっ……」
滝のように汗が流れた。特に理由がないのがキモかったが、そんな自分も可愛いと思えた。汗が目に入り、2・3歩よろけた。偶然にも、欽ちゃん走りと全く同じ動きをしてしまった。こんな屈辱は、生まれて初めてだった。
「ゲットゥ!!」
ゲッツとゲッチュの中間の言葉を発しながら、拳銃を床に叩きつけた。心が荒れていた。誰でもいいから無茶苦茶に抱いてほしい、そんな感覚に近かった。拳銃は壊れた。大袈裟な音を立てながら、木っ端微塵になった。嫌なヤツ、と思った。
私は泣いた。ケンケンパをしながら(身体で愉快なムーヴを行い心とのバランスを取るため)、部屋を後にした。ケンケンパの「パ」のタイミングでドアに着いてしまい、スムーズに通過できなかった。胸が張り裂けそうだった。
帰ろう。家に帰って、何かしらのテレビ番組を見ながら、OS-1を飲もう。私は経口補水液としてではなく、味としてOS-1が好きだった。
ケンケンパの「パ」のタイミングで、愛車の前に到着した。私の相棒だ。側面にトラックのシールが貼ってある乗用車。いつ見ても可愛く、頬ずりしたいぐらいだった。した。
車を運転した。
「ただいマンコ」
かなり面白い言葉を吐きながら、私は部屋のドアを開けた。部屋は散らかり放題だった。何となく、散らかっている方がセンスがある感じがして良い、と思っていた。ナメられたくなかった。リモコンの左上を押した。
「OS-1、私は飲んでる」
CMが流れていた。初めて見る芸能人だった。