お茶2
どうですか?
(おわり)
翔べよ麗春(リーチュン)
「ボゥノ!ボゥノボゥノボゥノ!」
美味しいという意味の外国語を連呼しながら、男はすくと立ち上がった。
両手を胸の前に持ってき、ぐるぐると回していた。汽車の真似にしては、左右の動きがバラバラ過ぎる気がした。男が座っていた椅子は真っ二つに割れていた。
「お粗末さまです」
ボゥノへの回答のあと、私はお辞儀をした。念のためもう一度お辞儀をした。私は慎重な女だ。
顔を上げると、男は汽車の真似?をとっくに辞めていた。仁王立ちで、おそ松さんのエロ同人誌を読んでいた。生まれたての野生動物のような、不安定さと力強さが同居した雰囲気を感じた。気のせいだった。
「今からでも、料理人に転向したらどうかね」
おそ松さんの同人誌から目を離さないまま、男が会話を続けてきた。そんなに私のおにぎらずが気に入ったんだろうか。私が唯一作れる料理だった。
テーブルの上のおにぎらずは、一口も減っていなかった。不意に老人が近づいてきて、私のおにぎらずにタバコを押し付けて去っていった。
「いや、何言うてはるんすか(笑)」
当たり障りのない後輩のような返事を誤魔化すように、私は壊れたブリキ人形のごとく戯けたポーズをした。男に見せるのではなく、自分を鼓舞するためだった。
れろり。男は指にツバを付けて、同人誌のページをめくった。ページとページの間が糸を引いていた。単純に不愉快だった。
「これを見たまえ」
不意に男が、見開きのページを差し出してきた。
あぁああ〜〜……っ♡みたいな声を出しながら、カラ松が射精していた。服は脱がされ、カラ松以外の5人に、毛筆でくすぐられているらしかった。地獄だった。ページの隅には男のツバの痕がべっとりと残っていた。むしろ私が悪いような気もしてきた。
「今回のミッションだよ、春麗くん」
凛々しい顔をしながら、男は同人誌をテーブルの上に置いた。その上に私のおにぎらずと老人のタバコを置いて、バン!!と思いきり挟んだ。
私のおにぎらずは、カラ松の射精シーンで破壊された。タバコの火がまだ生きていたらしく、おにぎらず破壊マシーンこと同人誌に燃え移った。先ほどの老人が、消火器を手に走ってきた。私たちのテーブルを一瞥もせず、そのまま通り過ぎていった。
「期限は3週間、報酬は10億だ。じゃあそういうことで」
男は私に背を向け、先ほどの汽車の真似?をしながら去っていった。小さな女の子が不思議そうに見ていた。何がおかしいんじゃこのクソガキ!!!!!と怒鳴り散らしていた。
女の子は泣かなかった。偉いが、同時に生意気だとも思った。もう少し可愛ければ、殴ってあげてもよかった。
「はあ」
これからどうしようか。3週間のうちに何をすれば良いのか、私は全く分かっていなかった。今回のミッションを確認したかったが、既にカラ松は炭になっていた。自分の愚鈍さを呪った。
私は隣のテーブルに行き、他人の赤ワインをガブ飲みし、何をするんだと言う相手を蹴り飛ばし、もう一度ワインをガブ飲みし、あ゛〜〜〜〜(笑)と関根勤がたまにやる笑い方をした。
「行くか」
まだ3週間あるし、何とかなるだろう。店内もだいぶ騒がしくなってきた。おにぎらずの持ち込みを指摘してきた時から、いけ好かない店だった。
チュートリアルの徳井がたまにやる面白い動きをしながら、私は店をあとにした。途中、あの小さな女の子が不思議そうに見てきた。一生やってろ、と内心で馬鹿にした。
ダブルマシンガン
目から鱗だった。
鱗を落としながら私は、イカ天瀬戸内れもん味を食べた。美味しいけど、みんなが言うほどじゃないかな、と思った。手がベタついた。次からはティッシュで拭こう、と堅く誓った。嘘。堅くは誓わなかった。
「2段ジャンプが出来るキャラは、2段階で転べるのかな」
私に鱗を落とさせながら、彼はアボカドを丸かじりした。アボカドとイカ天瀬戸内れもん味、彼はじゃんけんでアボカドを選んだ。どっちもどっちだからね、と言っていた。どっちもどっちなんだ、と私は思った。彼が言うことはいつも正しい気がした。
「それって、転びながら転ぶってこと?」
私の発言は無視された。アボカドを食べながら彼は、ウワーーッ、と何度か叫んだ。理由は分からなかった。遠くから祭囃子が聞こえた。あとで知ったが、別に祭は開催されていなかった。
「て、て、TVを見るときは〜、っと」
こち亀のオープニングの真似をしながら、彼はTVを付けた。全然面白くなかった。怒りで我を忘れそうになった。自分の内腿を思いきりつねって、必死で堪えた。馬鹿みたいに内出血した。紫とかを通り越して、黄緑になった。自分じゃなくて、物に当たり散らせばよかったと後悔した。
『NA,KA,TA!NAKATA!NA,KA,TA!NAKATA!』
パーフェクトヒューマンが流れていた。オリラジの中田さんが、ダンサーと、数十人の園児たちと一緒に踊っていた。そういう企画らしかった。ワイプでは、知らないババアが踊っていた。私が無知とかではなく、本当に芸能人でもなんでもない、知らないババアだった。
「完璧な人間なら、2段階で転ぶなんて、お手の物なんじゃない」
私の発言は無視された。私が尊敬する彼はもういなかった。死ね、と心の中で呟いた。TVを見ていた彼が私の方を向いて、「こっちの台詞だよ」と目を見開いて言ってきた。ブス、とも言われた。私はわんわん泣いた。画面の中では、幼稚園が燃えていた。誰も気付いていなかった。
「こちら葛飾区何とかかんとか」
彼はこち亀の正式名称を覚えていなかった。私の心はぐちゃぐちゃにされた。でも恋ってこういうものなのかな、という気もした。彼は、またウワーーッと叫んだ。私もウワーーッと叫んだ。疑いようもなくLOVEだった。パーフェクトヒューマンが流れ終わった。ワイプの知らないババアはまだ踊り続けていた。
お茶
(おわり)
VS(バーサス)よっちゃん
2年ほど前、こんなツイートをしたことがある。
【よっちゃんイカの個数を、袋を揉んだだけで当てられると豪語するおじさん】
— 店長 (@ten_cho_u) 2016年11月21日
(モミ…モミ…)
「う〜〜ん……」
どうですか?
「小(ちぃ)こいのがおる……」
よっちゃんイカ。失礼な話だが、そこまで愛着や思い入れがあるわけではない。
なんか酸っぱかった気がするが、細かい味はあまり覚えていない。それぐらいの印象。
何個ぐらい入っているかも、今の僕はイメージできない。
とりあえず買ってみた。
イカみたいな服を着てるけど、顔は意外と普通。こういう奴が裏では、他人の花壇を荒らしたりしている。
赤いアミを引っ張っているイメージだったんだけど、少し違う。これ何を引っ張ってるの?”うねり”?
15g入っているらしい。去年からあたり付きが無くなって、容量も変わったらしい。へー。
折角なので今回は、開ける前に何個入っているか当ててみます。
でも、ブログって正直、後出しじゃんけんも出来ちゃうじゃないですか。
開けて、数えてから、近い値を書いといて、惜しい!みたいな。そういう事も出来ると思います。大人になって、こういう小賢しい知恵が付いてしまった。イヤだな。
なので、簡単に仮説・計算をしてみて、それと合うかの検証をしてみます。揉んだだけで分かるツイート上のおじさんになるのは、また今度でいいや。
予想・仮定も多分に含んだ計算なので、あまりシビアに見ないでくださいね。泣いちゃうから。
【よっちゃんイカのサイズ】
こういう感じのが、2:1ぐらいの割合で入っていた気がする。
通常 :8mm×8mm×1.5mm = 0.096cm^3
小こい:2mm×5mm×1.5mm×1/3 = 0.005cm^3
【よっちゃんイカの比重】
スルメの情報を載せたHPがあったので、これを参考にする。
表面に三杯酢がコーティングされているようだが、微量と思われるので今回は無視する。
ちなみにお酢の比重は水と同じ1で、醤油は1.2らしい。日々勉強ですね。
曲がっているので分かりづらいが1番下のスルメを見たところ、8mm×10cm×1.5mmぐらい?厚みは勘です。
1.2cm^3で1.6g⇒比重は1.33g/cm^3 と推定。
調べてみたら、シルクの比重がこれぐらいらしい。だから何、って話だけど。
【計算・個数の推定】
通常 :8mm×8mm×1.5mm×(1.6g/1.2cm^3) =1個あたり0.128g
小こい:2mm×5mm×1.5mm×(1/3)×(1.6g/1.2cm^3) =1個あたり約0.006g
⇒15÷(0.128×2+0.006×1)×(2+1)=171.75…
⇒よっちゃんイカは172個入っている、と推定。
【検証】
ではいよいよ、検証してみます。
妙に暗いのは、多目的トイレで撮影しているからです。
開けます。
取り出してみました。予想よりだいぶ大きい?
っていうか、ん?
小(ちぃ)こいの無くない??
えっ?前まであったよね?無くなったの?
おじさんが「う~ん、小(ちぃ)こいのがおる」って言ってたアレは??
39個。
39個???
全然違うくない?さっきの計算なんだったの?
あと、小(ちぃ)こいのはどこ行ったの???????
ねぇ、どこ行ったの???????
ねぇ!!!!!!!!!!!
ねぇ!!!!!!!!!!!
ねぇ!!!!!!!!!!!
おじさんが感じてたやつ!!!!!!!!!!!小(ちぃ)こいやつ!!!!!!!!!ねぇ!!!!!!!!!!!!!
ねぇ!!!!!!!!!!!
んああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
何も分からなくなったので、美味しく食べたあと気絶します。ありがとうございました。
セクシーデート
「おでんの具ってさぁ」
そう言いかける男の頭を、私は拳銃で撃ち抜いた。映画のような派手な演出はなく、大変シンプルな即死で好感が持てた。撃つとほぼ同時に後ろへ少し吹っ飛んだので、それは死ではなく、衝撃によってなのだろう、と気付けた。普段の私は撃つとすぐにスマホを眺めてしまうため、見逃していた。スマートフォン 見すぎていたら あかんぜよ。頭の中の誰かが私に川柳を詠んできた。殺した。
「ふーっ……ふーっ……ふーっ……」
滝のように汗が流れた。特に理由がないのがキモかったが、そんな自分も可愛いと思えた。汗が目に入り、2・3歩よろけた。偶然にも、欽ちゃん走りと全く同じ動きをしてしまった。こんな屈辱は、生まれて初めてだった。
「ゲットゥ!!」
ゲッツとゲッチュの中間の言葉を発しながら、拳銃を床に叩きつけた。心が荒れていた。誰でもいいから無茶苦茶に抱いてほしい、そんな感覚に近かった。拳銃は壊れた。大袈裟な音を立てながら、木っ端微塵になった。嫌なヤツ、と思った。
私は泣いた。ケンケンパをしながら(身体で愉快なムーヴを行い心とのバランスを取るため)、部屋を後にした。ケンケンパの「パ」のタイミングでドアに着いてしまい、スムーズに通過できなかった。胸が張り裂けそうだった。
帰ろう。家に帰って、何かしらのテレビ番組を見ながら、OS-1を飲もう。私は経口補水液としてではなく、味としてOS-1が好きだった。
ケンケンパの「パ」のタイミングで、愛車の前に到着した。私の相棒だ。側面にトラックのシールが貼ってある乗用車。いつ見ても可愛く、頬ずりしたいぐらいだった。した。
車を運転した。
「ただいマンコ」
かなり面白い言葉を吐きながら、私は部屋のドアを開けた。部屋は散らかり放題だった。何となく、散らかっている方がセンスがある感じがして良い、と思っていた。ナメられたくなかった。リモコンの左上を押した。
「OS-1、私は飲んでる」
CMが流れていた。初めて見る芸能人だった。