パーフェクトロード

「ウイリーちゃんぽん」

 

私は耳を疑った。真面目さだけが取り柄の垂柿(たるがき)君の口から、まさか造語が出てくるとは夢にも思わなかった。私は胸を一度強く叩き、死んだ。

 

「それってどういう意味?」

 

私は垂柿君に問いかけた。垂柿君は計算ドリルを解き始めていた。流石の怪力だ。私は怒りで我を忘れた。垂柿君に近付くと腕まくりをし、くぉら!!と桃鉄のぶっとびカードのタトゥーを見せつけた。垂柿君は泣いていた。私も思わずもらい泣きしてしまった。

 

「アイスウーロン茶」

 

今度は存在している物の名前を呟いた。路線変更。会話は列車だ。私は自分の心の中の鐘を鳴らした。ポケットからチーターハムを取り出して食べた。時刻は夜中の3時を回っていた。

 

「クンニ」

 

私は垂柿君の頬を思いきりビンタした。下ネタは苦手だった。叩いた後の手の平をそっと嗅いだ。永谷園 松茸のお吸い物の匂いがした。私は胸を一度強く叩き、死んだ。右を振り向くと、ドリカムの吉田美和さんがヒレカツを食べていた。エリートは違いますな(笑)たっはっは(笑)

 

「取引きをしましょう」

 

垂柿君の目をじっと見つめ、私は本日の目的を話し始めた。垂柿君は腕にバカでかいダイヤの指輪を“巻いている”。AEDと全く同じ大きさらしい。私はそれが欲しかった。取引きに応じなければ、垂柿君の命は無い。

 

「8000億円でどうだ?」

 

垂柿君が仕掛けてきた。幾らなんでも高すぎる。ダイヤモンドってそんなに値段が張るの?私はきゃああぁあ!!と叫び垂柿君に再びビンタをお見舞いしようとした。かわされ、一周し、右にいた吉田美和さんに直撃した。「ねぇ どうして…」と消えそうな声で囁いていた。私は悪くない。

 

「貰う、ってことは出来ないの?」

 

今度は私が仕掛けた。垂柿君は、これはとても高額なものだから、無料で譲るわけにはいかない、という内容のことを丁寧に説明してきた。私は必死でメモを取った。額からは汗がしたたった。

 

「議論は平行線ね。まるで…」

「線路のように?」

 

垂柿君がそう言ってニカッと笑った。線路?よく分からなかったが、救われたような気がした。こんな時は、アレをするしかないよね?私と垂柿君は目を合わせて頷いた。

 

ナイス・ナイス・グッド・ミドル・エイト・フォー・ダンス。

ナイス・ナイス・グッド・ミドル・エイト・フォー・ダンス。

ナイス・ナイス・グッド・ミドル・エイト・フォー・ダンス。

ナイス・ナイス・グッド・ミドル・エイト・フォー・ダンス。

ナイス・ナイス・グッド・ミドル・エイト・フォー・ダンス。

 

右を振り向いた。ドリカムの吉田美和さんが焼きそばを食べていた。