スーパー無常1-1

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「ライライライラライライラライ!」

「ライライライラライライラライ!」

 

FUJIWARA原西のギャグを叫びながら、男女は極めて楽しそうに何かを振り回していた。

偶然ハイスピードカメラで撮影したので、録画を止めた後、机の下でその何かを見てみた。小太鼓を叩くためのバチで、先端に「TENGA」と彫られていた。

 

私の挙式は、見ず知らずの3人組に完全に占拠された。

 

中央の男がスゥ、と息を吸い、ヒンズースクワットをしながら手で十字を切り、サイタマサイタマサイタマ…と言い“ながら”、私たちにゆっくりと話し始めた。

 

「え〜〜皆さん。スーパーマリオのキラー。ご存知でしょう。彼には豊かな表情がありません。貼り付いたようにニヤリとしながら、それなりのスピードで、マリオに突っ込むばかりであります。私(ワタクシ)には彼の気持ち、よぉくよぉく分かります。アレはね、“恐怖”なんです。自らの役割と、運命から、逃げられない。マリオに当たって死ぬか、避けられて、情報を永遠に彷徨うか。そうなった時、人ってね、キラーってね。笑うしかできないんですよ。悲しい悲しい表情なんです。申し遅れました、私(ワタクシ)、スムージー 光(すむーじー ひかる)と申します。申しました。誰かがね、誰かがキラーの無念を晴らさないといけないんです。そのために私達(ワタクシたち)、徒党を組みました。先ほどSNSで出会いました。チーム名をドラキュラ(どらきゅら)と申します。え゛ぇんっ!!失礼、少しガムを噛ませてください。ぱくりんちょ。

 

 

くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ

 

 

噛みました、続けます。噛んだガムはどうしたって?飲み込んでなんかいませんよ。“噛んだから、もう終わり”です。こいつも役目を終えたんです。キラーの代わりに、無念を背負ってくれたんです。勇敢だとは思いませんか。勇敢とは、思わんかァァァァァアァァァッッッッッッッッッッ!!!!!」

 

スムージーは叫んだあと、水泳の蹴伸びのように両手を突き出したまま、私達のウェディングケーキに向かって走り始めた。表情は完全に、キラーそのものだった。誰かがこの悲しみを止めないといけなかった。

 

助けよう。式はまた、やり直せばいいじゃないか。目の前にいるこの男を助けなくて、何が幸せか。なあ、そうだろう。左にいる妻の方を勢いよく向いた。

 

「あぁあ〜〜〜〜〜〜♡♡」

 

普通に気持ちよさそうにおしっこをしていた。おしっこをするなよと思った。